前の記事の付録です。
ここからは「余談」になりますので、スルーして戴いてもかまいません。

前の記事でスイスの物価高の一端にふれましたが、
高くなったのはスイスではない。
沈んだのは・・日本円です。
「スイスは高い!」
スイス旅行記のSNSやブログで、まず出てくるのがこの言葉です。
確かに高い。ホテルも高い。山岳鉄道も高い。レストランも高い。
……でも、本当にスイスだけが悪いのでしょうか?
スイスの消費者物価を調べてみると、意外なことが分かります。
それほど上がっていないのです。むしろ、日本より低い。
IMFのデータを基に2019年を100とするグラフを作成してみました。
2026年の消費者物価指数は日本が114.4、スイスが106.6です。
これって、「スイスは物価高で大変だ」というイメージとは、少し違いませんか。
毎年スイスを訪れている私たちの実感でも、買い物や外食をしていて、「スイスフランの価格がものすごく上がった」と感じることは、それほど多くありません。
山岳地帯の交通費や宿泊費は、以前より高くなったと感じます。
これは、スイスを訪れる観光客が増えたことで、需給バランスが変わってきたためではないかと思います。
それでも、スイス全体の物価が日本人の想像するほど暴騰したわけではありません。
では、いったい何が起きたのでしょう。
犯人は・・・スイスではありません。
以下のグラフは、直近のIMFのデータを基に、スイスフラン、USドル、ユーロに対する日本円の推移を比較したものです。
2019年に1CHF=109.7円で買えたものが2026年には201円となり、日本円では約1.8倍です。スイスの物価が1.8倍になったわけではありません。日本円で支払うと1.8倍になったのです。
犯人は・・・日本円だったのです。
米ドルも同じです。1US$は109.0円で買えたモノが2026年には158.8円と1.5倍。
世界から見れば、「日本円が安くなった」という話です。
ところが、日本に住んでいる私たちから見ると、「海外が高くなった!」となる。
海外に住んでいる人が日本にインバウンドすると「超安い、大バーゲン!」
なんともややこしい話です。
輸入コストの上昇は日本国内の物価にも跳ね返ってきます。
そして海外旅行も当然、高くなる。「昔はヨーロッパ旅行なんて、もっと少し気軽に行けたのに……」
そう感じるのも無理はありません。航空券の価格もドル建ての原油価格高騰で上がっています。
さらに基軸通貨である米ドル換算で日本を見ると、これ大丈夫???
日本の家計が保有する金融資産の価値も、ドル換算では大きく目減りしています。実質的な購買力も低下。
GDPも停滞(←クリックすると一目瞭然) こう書いていると・・・内憂外患。
前回の記事の最後に、「日本人旅行者がスイスで楽しむには・・・金銭感覚をマヒさせること」と書きました。
冗談のようですが、案外これが正解かもしれません。出来れば現地通貨のままデビットカード決済(CHF口座)することです。
乗り物もトラベルパスや地域限定パスを購入し、都度窓口で買わない方が精神衛生上もお薦めです。
「ここからのマッターホルンの景色は2万円くらいかな・・」なんて計算しはじめたら、終わりです。(笑)
「アルプスの風景と空気はプライスレス!」「この眺めは天の恵み、冥途への土産」と思いましょう。
それでも、帰国して円残高を見れば・・・Ah・・・・(嘆)
時を経れば・・・スイスの絶景が脳裏に甦ってくる。(憧)
取崩しながら余生を過ごすのが定めとは云うものの、これほどまでに円安のツケがまわって財布の中身が軽くなるのは・・・「もう笑って誤魔化すか、あきらめるしかない」ですね。(苦笑)
せめて旅のあいだはそんな現実を忘れ、夢の世界に身を置きましょう。